「死後の世界」について考えたとき、多くの方が思い浮かべるのが、この世とあの世を分ける三途の川ではないでしょうか。
故人様が無事にあの世へ旅立てるよう、葬儀の際に棺に納められる「六文銭」の風習は、故人様への最後の願いを込めた大切な儀式です。
しかし、もし三途の川の渡し賃であるお金がない場合、故人様はどうなってしまうのか、本当に渡し賃はいくら必要なのかなど、様々な疑問を抱く方もいらっしゃるはずです。
故人様を心穏やかに見送るためにも、三途の川にまつわるお金の知識を正しく知っておくことは、現代を生きる私たちにとっても非常に意義深いことです。
本記事では、故人様が渡し賃となるお金がない状態で三途の川に辿り着いた場合にどのような試練が待っているのか、具体的にいくらのお金が必要なのかという疑問から、現在主流となっている紙製の六文銭の作り方、そして生前の行いによって分かれる三途の川の渡り方や舟の役割まで、この古くからの伝承を多角的に解説していきます。
故人様への深い想いを込めた日本の葬送文化について、知識を深めていきましょう。
三途の川でお金がないとどうなる?
結論から申し上げますと、三途の川を渡るためのお金を故人様がお持ちでない場合、非常に厳しい試練を強いられることになります。
渡し賃を持っていない死者は、川のほとりにいる番人である奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)に生前の衣服をすべて剥ぎ取られてしまいます。
この状態で、故人様は火や血、あるいは刀が流れる危険な川を裸で渡らなければならず、冥界での最初の大きな苦難に直面するのです。
このお金は単なる運賃というだけでなく、故人様があの世への旅路を無事に進むためのお守りのような役割も持っています。
そのため、この渡し賃がないということは、故人様の旅の安全が守られないことを意味し、善人であっても苦難の道を歩むことになりかねません。
しかし、現代では本物のお金ではなく、紙で代用された冥銭を棺に納める風習が多く、故人様が三途の川で困ることがないようにとの家族の願いが込められています。
三途の川のお金はいくら必要?
三途の川を渡るために必要とされるお金、すなわち渡し賃は「六文銭」であり、現代の貨幣価値に換算するといくらになるのでしょうか。
結論としては、江戸時代初期の価値で見て、現代の約180円から300円程度、一般的には195円前後が必要とされています。
これは、当時の近距離の公共交通機関の運賃に相当する程度の金額であったと考えられます。
このお金は、単なる運賃としてだけでなく、故人様があの世の旅路を安全に進むためのお守り「冥銭(めいせん)」としての役割を果たすため非常に重要です。
「六文」という数字は、仏教で説かれる六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天)に由来するとされ、故人様が辿る可能性のある六つの世界に対応できるという意味が込められているのです。
そのため、実際にいくら金額が必要かということ以上に、象徴的な意味合いが強く、故人様が無事に旅立てるようにという願いを込めて、現代では紙に印刷された六文銭が棺に納められることが多いです。
三途の川にまつわるお金の風習について
三途の川を無事に渡るためのお金「六文銭」にまつわる風習は、故人様の旅立ちを見送る上で非常に重要な意味を持ちます。
このお金を故人様の棺に納めるという行為は、現代の葬送文化においても、故人様の旅路の安全を願うお守りとして深く根付いている伝統です。
かつては本物の硬貨を納めていましたが、火葬炉への配慮から、現在では紙製の六文銭で代用することが主流となっています。
次のセクションでは、実際に故人様の棺にお金を入れる習慣の有無や、その代用品の作り方について、さらに詳しく解説していきますので、ぜひ続けてご覧ください。
お金を棺に入れる?
三途の川を渡るためのお金(六文銭)を故人様の棺に納める風習は存在しますが、現代ではその形態が変化しています。
結論として、本物の硬貨を棺に入れることは減少しており、紙製の六文銭で代用することが一般的になっています。
これは、硬貨などの金属類を火葬炉に入れると、炉を傷つけたり、火葬後の遺骨に付着してしまったりする可能性があるためです。
このお金を納める習慣は、故人様が三途の川の渡し賃に困ることがないようにという、平安時代末期から続く深い願いが込められています。
特に、六文銭は仏教の六道に由来する象徴的な意味を持ち、故人様のあの世への旅の安全を願うお守りとしての役割も果たしてきました。
現在でも、故人様への最後の思いやりとして、紙製の六文銭や少額の紙幣を棺の副葬品として納める地域はありますが、全国一律の習慣ではなく地域差が見られ、特に北海道や東北地方での風習として残っています。
お金の作り方
三途の川を渡るためのお金「六文銭」は、紙製の六文銭を自作するか、葬儀社に用意してもらうのが最も一般的な作り方です。
現在では火葬炉への影響を考慮し、燃える素材での作り方が工夫されています。
自作の作り方としては、インターネット上で六文銭の図柄のテンプレートをダウンロードし、和紙などに印刷する方法があります。
印刷後は六つの円形に丁寧に切り取れば完成です。
また、故人様への思いを込めて、白い紙に6つの丸を描き、筆ペンなどで「六文銭」の文字を手書きする作り方も、伝統的な雰囲気を出すことができます。
このお金は冥銭として、故人様があの世で困らないように持たせてあげるものですから、どのような作り方であっても、心を込めることが大切です。
あらかじめ紙製の六文銭を用意している葬儀社もあるかもしれませんが、不安な場合は葬儀担当者にご相談ください。
三途の川の渡り方について
三途の川の渡り方は、故人様の生前の行い(罪の軽重)によって、大きく三種類に分かれます。

最も安全な渡り方は、善人として裁かれた方が進む、金銀や七宝で造られた橋を渡るルートです。
三途の川の激流を避けて楽に渡ることができ、苦しむことがないとされています。
次に、比較的軽い罪を犯した故人様は「山水瀬(さんすいせ)」という浅瀬を自力で渡る渡り方です。
多少の困難は伴いますが、穏やかな瀬を進むことになります。
対して、重い罪を犯した故人様は「強深瀬(ごうしんせ)」と呼ばれる激しい流れの深い場所を泳いで渡らなければなりません。
この渡り方は、岩や鬼の攻撃にも遭う非常に厳しい試練であり、あの世へたどり着くのが困難です。
故人様が無事に渡れるよう、残されたご家族が初七日などの法要で手厚く供養することが、より安全な渡り方につながると信じられています。
三途の川の舟について
三途の川を渡るための舟(渡し船)は、古くからの伝承において非常に象徴的な存在です。
すべての死者が三途の川の舟に乗って渡るわけではありませんが、「救いの舟」としてのイメージは広く残っています。
もともと、故人様の生前の行いによって、善人は橋を渡り、罪の重い方は激流を泳いで渡るという渡り方が主流でした。
しかし、平安時代末期頃から浄土信仰が広がるにつれて、阿弥陀如来の力で故人様が安全に極楽浄土へ導かれるという思想が浸透し、その救済の象徴として舟に乗って三途の川を渡るというイメージが加わりました。
この渡し船に乗るには、六文銭という渡し賃が必要とされ、奪衣婆や懸衣翁が渡し守を務めると伝えられています。
舟は、故人様があの世へ無事に旅立つための希望や救済を象徴する役割を担っていると言えるでしょう。
まとめ
本記事では、故人様があの世へ旅立つ際に渡るとされる三途の川にまつわるお金の知識と、それに付随する葬送の風習を詳しく解説いたしました。
故人様が渡し賃となる六文銭をない状態で三途の川に辿り着くと、渡し守である奪衣婆と懸衣翁によって衣服を剥ぎ取られ、厳しい試練を強いられることになります。
この六文銭は現代の価値に換算すると約180円から300円程度とされますが、金額以上に故人様の旅路の安全を願うお守りとしての意味合いが強いものです。
現在では、火葬炉への配慮から本物の硬貨を棺に入れることは少なくなり、紙製の六文銭で代用する作り方が主流となっています。
また、三途の川の渡り方は、善人は橋、軽い罪の方は浅瀬、重い罪の方は激流と、故人様の生前の行いによって異なり、必ずしも舟に乗って渡るわけではありません。
三途の川を無事に渡れるよう、お金を棺に納めるという風習は、故人様を思う深い供養の心から生まれており、この文化はこれからも大切に受け継がれていくでしょう。


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